【ほん怖】ほんのりと怖い話まとめ - 【ほん怖】その山で鏡を見てはいけない

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【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
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【ほん怖】その山で鏡を見てはいけない

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昔、家の近所の山に粗末な山小屋があって、
そこにオナガさんって人が住んでいた。

めったに山から降りてこなくて、
なんの仕事をしていたのか分からない。

オナガっていうのもどんな字か知らないし、
もしかしたらオオナガだったかもしれない。

俺と友だちで、
オナガさんの山小屋に遊びに行ったことがある。

拍手[2回]

その時、俺は

「どうしてこんなところに住んでいるのか?」

って意味のことを聞いた。

その時の話がスゲエ怖くて、
しばらくは夜一人で寝れなかった。

オナガさんは、
ちょっと前まで普通の家に住んでた。

家はちょっとした山持ちで、
代々受け継いだ山がいくつかある。

そのうちの一つに、妙な言い伝えがあった。

「その山で鏡を見てはいけない」

いかにも曰くありげな口伝だったが、
オナガさんは、
親父さんや山守をしている飯橋のじいさんに聞いたらしい。

ある時、その山の奥で木を切ることになって、
飯橋じいさんの孫でトシカズって人が、
そこまで道を通すことになった。

土建屋で借りて来たパワーショベルで、
山を切り開いて道にしていく。

その日、オナガさんは作業の様子を見に行った。

ちょうど例の山に差し掛かっていたらしい。

パワーショベルに乗っていたトシカズさんが、
急に作業の手を止めた。

怪訝な顔でバックミラーを覗いている。

「…どないした?」

オナガさんが近付くと、
トシカズさんはミラーを指差して言った。

「や、ここにね、何か変なモンが映っとるんですよ」

オナガさんがミラーを見ると、
自分とトシカズさんの背後にポツンと白い点があった。

ジッと見つめいていると、
僅かに動いている。

振り向いたが、
近くにそんなモノは見当たらない。

「さっきから、
ちょっとずつ近付いとるみたいなんですわ…」

気味が悪かったので、
その日はそこで作業を切り上げ、
二人で飲みに行った。

その日から、
トシカズさんの様子がおかしくなった。

あきらかに何かに怯えている。

オナガさんも気付いていた。

家でも外でも、
鏡を覗くたびに背後に見える白い点。

「あいつどんどん近付いてくるんですわ」

近付くにつれ、
オナガさんにもソイツの姿がハッキリと見えてきた。

胎児のように白い皮膚、短い手足。

丸い頭には、
切り裂いたかのように大きな口だけがついている。

見ためは人の口。

まったく血の気のない白い唇が、
しっかりと閉じられている。

トシカズさんは、
もう作業ができないくらい精神的に参っていた。

「もう、すぐ後ろにおる…」

数日後トシカズさんが、
閉じ篭った自宅の部屋で死んでいるのが見つかった。

後頭部に一口大の穴が開いていて、
脳みそが全部無くなっていた。

「トシカズはあいつにやられたんや。
あいつがおるのは鏡の中だけやない。
ガラスや光る物にも写る。
見るたびにどんどん近付いてくる…
せやから俺は、こんな山小屋に住んでいるんや」

山小屋には、ガラスや光沢のある金物など、
何かが写り込むようなものは何もなかった。

「…それでも、時々水面とかを見てしまうことがある。
俺、もう半分食われとるんや。
こないだ、とうとう口を開けよった。
米粒みたいな歯がびっしり並んどったわ」

そう言って、
オナガさんは腕まくりをして見せた。

手首の辺りに、
細かい点の並んだ歯型があった。

それからしばらくして、
オナガさんが死んだと聞いた。

死に様は分からなかった。

寝れない夜が、またしばらく続いた。

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