【ほん怖】ほんのりと怖い話まとめ - 【ほん怖】山還り

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【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
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【ほん怖】山還り

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私共の地元では、
山を神聖視した土着の自然信仰が行われています。

現在廃れて来てはおりますが、
それでも老人方は信仰すると共に畏怖、畏敬の念を絶やしません。

それには理由が在りまして、
昔私共の地元では、口減らしと共に姥捨てが行われていました。

しかしながら、姥捨てとはもうしましても、
他所とは若干考え方を異にしています。

拍手[1回]

地方によって呼び方も変わると申しますが、
私共の土地では「山還り」、「山還し」 と呼んでいたそうです。

今でも私共と老人方、
信心深い方は同じように考えておりますが、

「人は死ぬと山に還り、そして山、土地と一つになる」

と、このように考えておりました。

その為、不作等か続くと労働力の低い老人方に子供が、

「山に還ってくんねぇか」

と、こう言うわけです。

すると多くの老人方は、

「分かった。山に還ったら、うちの畑が肥えるようにするからな」

と返し、同意して山に当時の私共や、
今は絶えてしまった私共と同じ山に連なる方々――ササギと共に入るわけです。

無言、無言、無言。

静寂こそ美徳。

その様にしてただひたすらに山へと登ります。

しかし、それも山の七合目に入ると、
ササギの者が山に礼をした後、老人に聞きます。

「早く還るか」

これにはいと答えると、
ササギの者は老人を殺し、
その遺体を私共が埋葬します。

その後祈りと敬い、
崇拝と感謝、謝罪を込めて頭を墓に二度下げ、
山の頂きに三度下げて帰ります。

しかし、山を見て歩きたいと言われると、
これ以上は登らぬようにと厳重に注意します。

その後村の為に良い影響を与えて下さいと、
私共とササギの者が老人と山に祈り、
老人を置いて山を去ります。

お気付きでしょうが、
その当時の老人方は、納得した上で、
いえ、寧ろ喜々として死んで往きました。

さて、
老人を山に還した家では、
大方様々な幸運が起こります。

畑が肥える、病が急に治る、神通力がつく、と言った具合です。

……昔、感謝を忘れ、
これに目がくらんだ者が居たそうです。

自らの母が山に還り、
残った父も山に還そうとしたそうです。

その男は父に山に還るように言いますが、
父は頑として首を縦に振りません。

「今はその時でない。
おれが還るのはまだ先だ。
あいつは言った。
わたしが還ったら畑を見てくれ。
荒れてしまったらあなたも還って二人で肥やしましょうと」

男は納得できず、
ある晩父を殴りつけて口を聞けなくし、
縛り付けて山に向かいました。

言葉を喋ってはならぬと、
当時の私共や他の山に連なる方々に聞いたのでしょう。

無言で登り続けます。

七合目に差し掛かり、
男は父を殺して埋めようとしましたが、
ここでは私共にばれてしまうと考えたのでしょう、
頂上まで行くことにしました。

八合目を越えると、
虫の声が聞こえなくなりました。

九合目を越えると、風が止みました。

そして頂上――

男は父を殺そうとしますが、
父を殴り続けるにつれて殺すのが怖くなり、
父を縛り付けたまま四肢の骨を折り、村に帰りました。

しばらく経つと、
男の畑が枯れ、男は病に倒れました。

身重の妻が、
二年経っても子を産みません。

仕方なく子堕ろし婆を呼び、
子を堕ろしました。

堕ろした子には四肢がありませんでした。

その子の顔は、
しわくちゃの顔をしておりました。

そして――男の顔を睨み、叫びます。

「畑が荒れた。次はお前が還る番だ」

男は当時の私共とササギの者に連れられ、
山に還りました。

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