【ほん怖】ほんのりと怖い話まとめ - 【ほん怖】岩壁

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【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
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【ほん怖】岩壁

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両手が岩壁の上に出た。

手がかりを掴み、身体を引き上げれば、登り切れる。

その手がかりが見つからない。

たしか、わずかな窪みがあったはずだ。

岩壁の頂点と、目の高さがほぼ同じ。

岩の上面を睨み、
手がかりが作り出す影を探したが、何もない。

拍手[1回]

左手を少し下ろし、
しっかり岩を掴んだが、その体勢からは登れない。

胸から上を岩の上に出し、
脇腹の辺りで左手が岩を掴んでいる。

両足は、ほとんど宙に浮いている。

右手の指先は、どこにもかからない。

腕全体を押し付けることも出来ず、
バランスが崩れ始めた。

もう、いくらも身体を支えていられない。

頭の中、落ち方を考え始めていた。

大した高さではないが、下は固い岩だ。

横の斜面へ落ちれば、地面だけは柔らかい。

横へ落ちるには、落ちる瞬間に左手で岩を突き放せば良い。

無論、斜面には木があり、枝があり、藪がある。

それでも、岩よりは良いと思った。

「落ちるぞ」

下に声をかけた。

その時、黒っぽい岩が波立ち、光った。

見事な坊主頭が、岩の上に浮いてきた。

右手が届きそうだ。

それが何であるかなど、気にしても仕方ない。

何もしなければ、落ちる他ないのだ。

坊主頭に手を乗せ、力を込めた。

「いてっ」

声が聞こえた気がしたが、構ってはいられない。

右手を支点に引き続け、右足が岩の上面にかかった。

これで何とかなる。

転がるように登り切り、息をつき、しびれる左手を振った。

坊主頭が振り返り、
ものすごい形相で俺を睨み、
ゆっくり岩に潜っていった。

波紋が広がり、その形のまま残った。

俺の手に岩は冷たく、硬かった。

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