【ほん怖】ほんのりと怖い話まとめ - 【ほん怖】海難

【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
【ほん怖】海難

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法令が改正され、
1.5kw(2馬力)の動力を持つ全長3m(実質3.33m)の船舶は
小型船舶免許不要、船検不要、登録不要となった。

2007年8月。

俺達のグループは、
それじゃあ大海原へ出て釣りをしてみようじゃないかと、
オクで中古インフレータブルボート2隻、
中古2馬力船外機2基購入し、
4人でF県K市から出航し沖合に出た。

DAY1

天気は快晴、波も穏やかではあったが、
俺達は無謀にも沖合5~6km付近まで出ていたようだ。

もしかしたらもっと沖だったのかもしれない。

それなりに釣れてそれなりに満足した俺達は、
そろそろ帰ろうということで出発地点に向かった。

戻れない・・

2馬力船外機を全開に回し進もうとするも、
どんどん出発地点から離れていく。

俺達のボートは潮流と向い風に流されて、
とんでもない速度で出発点から遠ざかった。

かなりの時間が経ち、
俺達は自分がどこにいるのかもよくわからないほど流されたところで、
ボートはゆっくりではあるがようやく動き出した。

どうやら潮止まりのようだ。

しかし風は相変わらず向い風。

すでに日没近くで俺達は焦っていた。

ただこの時は海岸線も見えていたため、
命の危険まではまったく思っていなかった。

やがて一隻がガス欠で機関停止。

ロープで曳航するも残る一隻もガス欠で同じく機関停止した。

しかたなく俺達は出発地点に戻るのをあきらめて、
オールで漕いで一番近い陸地を目指した。

一生懸命漕ぐが近づいているのか遠ざかっているのか全くわからない。

どうやらまた潮が動き出したようで、
俺達はまたとんでもない速さで流されていった。

流されていく方向に有人の島が見える。

俺達はその島に上陸することに決め、
オールで進路を補正しつつ流れていく。

が、上陸に失敗。

俺達の必死の漕ぎも虚しく、
ボートは島の500mほど横をかすめて沖合に流されていった。

後から思えば、
このあたりは島や湾の影響で潮流が微妙に複雑だったらしい。

万事休す、この時になって
このままではリアルに遭難してしまう可能性が頭をよぎった。

しかしそれでも命の危険性についてはそう心配してなかったのは、
やはり視界のどこかに陸地が島が見えていたからだろう。

やがて日が暮れ周囲の様子が全くわからなくなった。

さらに俄に海況が悪化し、
わずか5分程度の間に海は白波が立ち、
強風と雷、そして雨、つまり海は大シケとなった。

もはやこれまでと携帯で警察に電話する。

しかし繋がらない。

そんなバカなと全員の携帯で電話するも全く繋がらない。

どうやら陸から離れ過ぎているのと、
シケの影響で電波が届かないようだ。

それでも電話を試みる。

だが繋がらない。

それどころか大荒れの中で通話を試みたおかげで携帯電話は全て海水を被り、
やがて完全に沈黙した。

ここに至り、俺達は『死』を意識しはじめた。

真夜中。

波の高さは2mを超えていたであろうか。

時折目の前に水の壁が現れる。

波の高さが2mということは最大の高低差は4m。

波頭が崩れ時折頭から海水の洗礼を受け、
船内は水船状態となった。

必死でバケツで水をかき出す。

大荒れの中、ボートとボートを繋いでいるロープのせいで
転覆しないはずのインフレータブルボートが、
不自然な力が加わり転覆しそうになる。

中途半端に長く出すと代えって危険なので、
必死でたぐり寄せボートとボートを密着させた。

DAY2

午前3時頃、俺達はまだ波に翻弄されていた。

気力・体力ともに限界である。

ボートに持ち込んだ荷物は、
手に持っているバケツ以外はほとんど海に流されてしまった。

「こりゃ死ぬな」

本気でそう思った頃、
周囲が徐々に明るくなってきた。

また荒れ模様だった海況も徐々に治まり、
やがて海面は鏡のように静かになった。

すでに限界を超えていた俺達は、
ホッとすると同時に睡魔に襲われ深い眠りについた。

午前10時、
焼けつくような暑さ・・いや熱さで目が覚めた。

今朝まで分厚く覆っていた雲は全く消えて無くなり、
どこまでも青い空と灼熱の太陽がジリジリと俺達を焼いている。

インフレータブルボートのチューブは、
熱の為さわれば火傷しそうなほどになっている。

それまで冷えきっていた体は、
熱波のため熱中症寸前までおいやられていた。

俺達は海水を頭から被って耐えた。

昨夜の嵐で失った荷物を確認・・・
無事だったのはロープとバケツとクーラーだけだった。

水も食料も全て失った。

午後4時。

脱水症状を起こし
海水を思わず飲みそうになるも思いとどまる。

クーラーの中の氷はすでに溶けており、
釣った魚と混ざりとても飲めたものではない。

が、魚はまだ食えそうだ。

俺達は釣った魚を指でさばいて身を生で食べた。

飢えと渇きは多少治まった。

今まで何度か漁船を目撃し手を振って助けを求めるも、
全て華麗にスルーされた。

午後6時。

ストレスが溜まり、
誰のせいで今の状況に陥ったのか責任の擦りつけ合いが始まる。

やがて日が沈み2回目の夜を迎えた。

醜く病んだ心の俺達とは裏腹に、
夜空の星のなんと美しいことか。

時々流れ星が見え、
知らず知らずのうちに

「死にたくない、家に帰りたい」

と願う自分がいた。

DAY3

午前8時、すでに灼熱の太陽が俺達をいたぶっていた。

熱い、咽が渇く・・

仲間の一人が唐突に海に飛び込んだ。

どうやら火照った体を冷やしているらしい。

それを見て次々と飛び込む。

が、飛び込んだヤツとボートの間隔がとんでもない速度で開く。

インフレータブルボートはその特性上、
どうしても風の影響をモロに受ける。

軽くなった乗員が減れば流される速さも上がる。

ボートに残された一人が必死でオールを漕ぐ。

飛び込んだやつらも必死で泳ぐ。

焦りに焦り、
10分ほどかけて再乗船できた。

無駄な体力を使ってしまった。

以後、水に入る時はボートのヘリに掴まるようにする。

午後2時、水に漬ってるやつに向かって

「すぐ上がれ!」

と悲鳴が飛ぶ。

何事かと改めて海を観察すると・・・なんだこりゃ?

おびただしい数の座布団が泳いでいる。

ていうか、これはエイ?

しかも図鑑で見たような典型的な形をしたエイ、アカエイだ。

慌ててボートにあがる。

幸いにも刺されるようなことはなかった。

アカエイの群れは30分ほどで消えてなくなり、
何人かはまたボートのヘリに掴まりながら海に入った。

午後4時、
水に漬っていたやつの足に何かがぶつかり、
慌ててボートに上がる。

何がぶつかったかはわからなかった。

周囲を見渡していると、

「あ、あれ!」

ペットボトルが浮いている。

しかもフタが閉められているようで、
浮いたり沈んだりしている。

ということは、
中にはまだ飲料水が入っている!?

必死でオールで漕いでペットボトルに近づこうとする。

一人がロープにバケツ結んで投げた。

しかしまだ距離があってうまく狙えない。

何度か投げているうちに、

バシュッ!

何かがバケツに食らいついた!?

バケツにアタックしてきたもの・・・それは・・・

シュモクザメだ!しかもでかい!

ハッと気がつけば、
俺達のボートはシュモクザメの群れのど真ん中にいた。

俺達はボートの上でできるだけサメを刺激させないように固まっていた。

そして3度目の夜を迎える。

もう疲れた・・考えることもできない・・

DAY4

午前7時。

驚いたことに俺達のボートはいまだにサメの群れのまっただ中にあった。

もうダメだ、
海に入って体を冷やすこともできない。

午前10時、渇きに堪え兼ねた一人が海水を飲もうとした。

必死で止めるとそいつは、

「海水を飲むと死ぬなんて都市伝説だ!
海水飲んで死ぬなら海水浴場で泳いでるやつなんてみんな死ぬだろっ!」

そう言って制止を振り切りガブガブと海水を飲んだ。

そして

「ふぅ、どうだ、俺は死ななかったぞ!」

と言い放ち、また海水を飲んだ。

その様子を見て、
たまらずもう一人も海水を一気飲みした。

午後11時。

突然一人が意味不明なことを喚き出した。

少し遅れてもう一人もおかしくなってしまった。

どうやら海水を飲んだせいらしい。

二人は

「泳いでいけば帰れる」

「陸はすぐそこに見えてるじゃないか!」

と笑いながら喚き飛び込もうとした。

残る二人が必死に止める。

止めながら、いっそ俺も海水を飲んで楽になるか・・
という恐ろしい考えが頭をよぎる。

午後2時。

暴れていた二人が嘘のように大人しく・・
いやグッタリしている。

死にかけているようだ。

うわごとで

「海から手が伸びてくる・・」

「人の飛行機が迎えに来た・・」

など本当に意味不明なことをいい、
さらに腕を空に上げてまるでフラダンスのようにユラユラと踊らせている。

この二人死ぬんだな・・・そう思った。

そして海水を飲んでいない二人も脱水症状で死にかけていた。

体のあちこちで皮膚がただれ、
唇は腫れ上がり、
もう体を動かすこともできない。

どうやらもう駄目のようだ。

家族のこと、大学の寮の仲間のこと、
そういえば来週から風呂の掃除当番だっけ、
まあいっか。

俺達死んだ後で見つけてもらえるのかなぁ・・・

お父さん、お母さん、ごめんなさい・・・・

午後3時。

ドン!

薄れゆく意識の中で突然大きな衝撃音が。

「おい生きてるか?しっかりしろ!」

俺達は真新しい漁船に助けられた。

「ああ、ああああ・・・」

助かった、助かったんだ・・・嬉しくて泣いた、
しかし極度の脱水で涙は出なかった。

漁船にあった天然水のペットボトルをガブ飲みする。

一気に体に覇気が戻る。

もう一人も水を飲んで息を吹き返す。

しかし残る二人はすでに意識はほとんど無い・・
が、まだ生きている。

ダメ元で無理やり水を飲ます漁師。

気管に入って死ぬかもしれないがそこは賭けだ。

ゴボッ!っと息を吹き返す二人、
よかったまだ生きてる。

そのまま漁港に直行すると救急車がすでに到着しており、
俺達はそのまま病院に。

俺達は全員生きて戻れた。

海水を飲まなかった二人はメキメキと回復し、
2日後には普通に歩き回れるほどに。

しかし海水を飲んだ二人は腎臓をかなり痛めてしまったため、
退院には一ヶ月近く要した。

ボートは漁協に保管されてくれていた。

船体は無事だったが、
2馬力船外機の方は海水をかぶったせいで
使い物にはならなくなっていた。

回復したお世話になった各方面の人達に厚くお礼をしてまわった。

助けてくれた漁師さんは、
新しく購入した新造艇のテスト航行中だったらしい。

俺達が救出されたポイントは漁場から少し離れているため、
普段はあまり漁船はこないとか。

まさに万に一つの偶然だった。

その後の俺達だが・・・

今回の海難事故は無知と無謀の極みとしか言いようがない。

たかだか2馬力の船外機では沖合に出るなど所詮無理だったのだ。

その教訓から俺達は小型船舶免許を改めて取得し、
各々が15馬力の船外機を搭載したインフレータブルボートを購入した。

このボートなら海況が変化したときに即座に戻ることができる。

しかしだ・・・

購入はしたものの、
もはやトラウマを背負ってしまった俺達は、
一度だけ海には出たものの、
その後はあの時の恐怖を沸々と思い出し、
それからは海には出ずじまいだ。

しかたがないので、
いつか内水面で使おうと永遠に計画している途中である。

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HN
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