【ほん怖】ほんのりと怖い話まとめ - 【ほん怖】深夜の峠道

忍者ブログ
【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【ほん怖】深夜の峠道

スポンサーリンク


友人の話

彼の友達はクロカンの先駆けとなった車を所有していた。

バンパーはプラスティックメッキでなく本物のステンレスの板金物。

裏には50Aもあろうかという立派なパイプで補強されていたって話だから、
たいそう昔の話だ。

当然、毎週末連日、
悪友共が集まってその車であてども無く走り回っていた。

拍手[2回]

その日も目的もなく走り回り四人が帰ろうと言出したのは夜半過ぎ、
彼やオーナの家から県境の峠二つ三つ超えた辺り。

帰り道、
彼は運転席の後ろ座席でうつらうつらとしていた。

オーナは助手席にふんぞり返り、
運転席は友人Aがハンドルを握り深夜の峠道をゆるゆると走らせ、
友人Bは彼の横で眠りこけていた。

一つ目の峠を過ぎて、
彼がぽつぽつと窓をたたく雨粒の音に気付きだした頃、
運転手とオーナが 「あっ」 と小さな声を上げた。

フロントガラスを見た彼の目に入ったのは、
茶色い服装の老婆がボンネットの下に吸い込まれるところだった。

峠を一つ超え人里に入った頃には
雨もワイパーが要る程に降ってきた。

前の席の二人が休憩しよう、とコンビニに寄った。

何の屈託もない様子で缶コーヒーを飲んでいる二人に対し、
彼は言った。

「ねぇ、自首した方が良くない?」

「そうだよ。今からでも行った方が良いよ」

友人Bも同意してきた。

どうやら彼も見ていたらしい。

「何の事だ?」

どうも話が合わない。

「さっきお婆さんを轢いただろう。
二人が声をあげた時」

「あっあの時か。
狸の親子が通ったんだよ、なぁ?」

オーナが声を掛ける。

「ああ、親狸に子狸が3匹、可愛かったよな」

友人Aが答える。

話をしてみると、
前の二人と後の二人は全く違った物を見ていたらしい。

前の二人は道を横切る狸の親子、
後の二人は自車に轢かれるお婆さん。

でも、後の座席からの前方の視野はX字で、
同時に見える角度は意外と狭い。

その狭い角度で二人同時に同じ物を見る、
と言うのも偶然すぎる。

結局、後の二人が寝呆けて狸に化かされたのだ、
と言う事でそのまま雨の中をそれぞれの家に帰宅した。

「でも本当に化かされていたのは、
どっちだったんだろうな」

彼は言う。

「狸の近くにいたのは前の二人だった。
車のバンパーも頑丈だったから、
低速で人一人轢いたところで凹み一つ残らない。
血痕があっても、帰路の雨できれいに洗われてしまっただろうし」

彼は力なく笑った。

PR

コメントを投稿する

HN
タイトル
メールアドレス
URL
コメント