【ほん怖】ほんのりと怖い話まとめ - 【ほん怖】足音

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【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
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【ほん怖】足音

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自分が以前勤めていた会社の事務所は、
古い雑居ビルにありました。

そのビルでの話。

「ここのビル、夜遅く階段使ってると、変な時があるよ」

と同僚の益田さんは言った。

階段室にいると上から、
または下から誰かがやってくる足音がするという。

拍手[1回]

こんな遅くまで他でもまだ残ってる人がいるんだ、
と思っているとその足音はどんどん近づいて来て…

足音だけが通りすぎてゆく。

姿は見えない。

ただ、何かの気配がすぐそばを通りすぎ、
足音が遠ざかってゆくのだという。

「こないだなんか、
階段を下りてたらやっぱり足音だけが追い抜いていってさ。
気味が悪いと思いながらやっと一階に来たら…
階段室と一階玄関の電灯が一度にパンッ!と消えてさぁ。
もうびっくり。チビりそうになったよ」

その話に他の同僚たちが、
ヤだなやめてよなどと言っていた。

しばらく後、夜遅くにやはり同僚の村松さんは、
得意先から商品交換で引き取った、
古いデスクトップのパソコンモニタと本体を持ち帰ってきた。

モニタと本体を営業車から下ろし、
台車に積んで六階の事務所の物置に入れようと、
エレベータを使おうとした。

が、ビルでひとつしかないエレベータの扉には、
無情にも『故障中・使用禁止』の貼紙が貼られていた。

「うわ。ちょっとぉー」

村松さんは舌打ちした。

今のパソコンはモニタも本体もずいぶん小型軽量化されているが、
少し前のパソコンはモニタもブラウン管式で、
男性の手でも持ち運びは大変だった。

重くてデカいパソコンを六階まで手で運ぶなんてまっぴらだ。

車に積んでおこうかな、と村松さんは思った。

しかし翌朝は一番で部長が車を使うと言っていた。

部長に文句を言われるのも…

村松さんはため息をつき、
まずはモニタを抱えて階段を上りだした。

しばらくすると、
背後から足音が聞こえてきた。

はじめは気にもしなかったが、
ゆっくり目の足音がどんどん近づいてくるにつれ、
村松さんは益田さんの話を思い出し、怖くなってきた。

まさか。他の誰かだろ。

自分にそう言い聞かせ、
さっさと六階まで上ろうとした。

その間にも足音はどんどん背後に迫っていた。

カツン、カツン…

村松さんは後ろを振り返った。

誰もいなかった。

うわぁ

村松さんはモニタを放り出して逃げたくなった。

カツン

足音は村松さんのすぐそばで響いて、
ずわぁっと村松さんの中を何かが通って行った。

「……!」

村松さんは声になっていない悲鳴を上げ…
モニタを落としてしまった。

自分の右足の甲の上に。

階段室に村松さんの絶叫が響いた。

「それから?もちろんちゃんと運んだよ。
モニタも本体も。部長に文句言われるの嫌だもん。
モニタの角は割れちまったけどさ。
まぁあれはどうせ廃棄するやつなんだし」

村松さんは労災を申請し、
しばらく足をひきずっていました。

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