【ほん怖】ほんのりと怖い話まとめ - 【ほん怖】ヘラ鮒釣りのナイター

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【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
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【ほん怖】ヘラ鮒釣りのナイター

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先輩に聞いた話です。

とある地方のダム湖へ、
ヘラ鮒釣りのナイターへ出かけたときの話。

現地を案内してくれる予定の釣友が急に来れなくなり、
一人で行くことになった。

拍手[1回]

一人でナイターは止めたほうが・・・
というボート屋の主人を説得し、
夕方、対岸のポイントまで引き舟をしてもらう。

蜩の声を聞きながら一服していると、
すぐに暗くなってきた。

山間にあるダム湖のため、周りに人工物は一切無く、
しかも案内されたポイントはワンドの奥につき、
まったく光も届かない。

ランタンを持ってきてはいたものの、
電池を交換し忘れた為すぐに点かなくなってしまった。

あたりは真っ暗闇。

風も無く、音も殆ど聞こえてこない。

ナイターは慣れているものの、
初めての場所でしかも一人となると、些か緊張する。

しばらく目をつむって、
闇に目が慣れたところで釣りを開始した。

同行できなかった釣友からは
相当イイ話を聞いていたので期待が持てる。

ところが、
開始してかなり経つものの全くアタリがなく、
魚の気配もない。

時間が早いのかなと思い、
しばらく休憩する。

タバコを吸っていると、
なにやら水が動く気配がする。

しばらくすると今度は、
ジャブジャブと水の中をゆっくり歩く音。

それに続いて、
湖岸を歩く音が聞こえてきた。

音は、ボートを係留してある真正面に大きな馬の背があり、
その向こうから聞こえてくる。

どうやら釣り師は私一人ではないらしい。

ほっとする反面、
彼は釣れたのだろうか?という興味が沸いてきた。

しかし、不用意に声を立てることも憚られ、
翌朝にでも釣課を聞いてみようと思った。

その後、釣りを再開したものの状況は先ほどと変わらず、アタリも無い。

もう一人の釣り師は相変わらず、
水の中と湖岸歩くことを繰り返している。

何をやって居るんだろう?と不思議に思い、
よく耳をそばだてていると、
今度はコツッと石と石がぶつかる音がする。

そのあとにまた湖岸を歩く音と、
ジャブジャブ水に入る音。

そしてまた湖岸を歩き石がぶつかる音。

それが非常にゆっくりと定期的に繰り返されている。

一旦気になるとどうしようも無くなり、
もう釣りどころでは無い。

思い切って声をかけてみた。

「釣れましたか?」

一瞬、湖岸を歩く音が止まった。

返事は無い。

しばしの緊張。

・・・また湖岸を歩き始めた。

このような状況にも関わらず、
不思議と怖いという感覚は無かった。

それよりも何をやっているのか気になって仕方なかったので、
思いきってボートを動かすことにした。

係留用のロープをほどき、
オール1本でゆっくりと漕ぎ出す。

月も出ておらず、
あたりは真っ暗なままだ。

ボートが惰性で馬の背の先端あたりで止るようコントロールした。

ゆっくり、ゆっくりとボートが馬の背の先端に近づく。

あと5mくらいか・・・。

そのとき急に、
何か見てはいけないものを見てしまうのではないかというに恐怖感が襲ってきた。

急いで引き返そうと思った。

しかし、体がいうことをきかない。

金縛りというやつか・・・。

本当は動かそうと思えば体は動くのだが、
何故か動く気がしない。

ボートは測ったように馬の背の先端でピタリと停止した。

目をつむっていようかと思ったが、
目を開けた瞬間の恐怖のほうが何倍も恐ろしく感じられ、
馬の背の向こう側に目を凝らした。

そして、見てしまった。

はっきりと・・・。

後からこの話をしても、

「見間違いだよ」

と誰からも言われる。

霊感なども無いし、
それ系の話も今まで信じていないほうであったが、
しかし、それを見た瞬間、
明らかにこの世の中の者ではないと断言できた。

こういった『もの』はやはり、
実際に見た人間でないと解らないのだと、
そのとき初めて理解した。

それは明らかに人間の形をしていた。

暗闇のなかに溶け込み、
真っ黒のシルエットでしか認識できなかったが、
中肉中背の男が全身黒のタイツのようなものを着用している感じだ。

それが水のなかに入り、
拳大の石をひとつひとつ湖岸に積上げていたのだ。

石は人の背ほどまで積まれていた。

声は出なかった。

だが、ここから早く離れなければ
確実に死ぬということを本能が告げていた。

ゆっくりとオールを手にとり、
ボートを漕ぎ出す。

『それ』は気づいているのかいないのか、
淡々と作業を繰り返している。

ワンドを出るまで、
馬の背を凝視したままゆっくりとボートを進め、
本湖に出てからは必死になってボートを漕いだ。

何が何だかわからなく時間の感覚もなかったが、
ようやくボート屋の桟橋にたどりついたときには少しは落ち着いていた。

翌日、ボート屋の主人に頼んで、
昨日のワンドに船外機付のボートで連れていってもらった。

主人によると、
昨日は平日のため客は一人だけだったらしい。

変に思われるといけないので、
特に説明はしていない。

ワンドに入り、
例の馬の背の向こう側にボートが入った。

果たして・・・それはあった。

うず高く積まれた石が。

そこで初めて昨夜の体験を主人に話した。

主人は青ざめた顔で

「はやくここから出ましょう」

と言って、凄いスピードでボート屋まで戻った。

何か知っているのか兎に角事情を聞きたかったが、

「貴方はなるべく早くここから離れてください。
そして、2度とここには近づかないでください」

の一点張りで、
何も聞くことは出来なかった。

主人の忠告どおり、
それ以来その湖に近づいていない。

特に変わったことが身の回りで起こっているわけでもない。

しかし、たまに、
あれはいったい何だったのか・・・とふと思う。

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