【ほん怖】ほんのりと怖い話まとめ - 【ほん怖】桜舞い散る山道

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【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
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【ほん怖】桜舞い散る山道

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私の家には奇妙な風習がありまして、
何故かよく宴会を墓場でやることがあります。

墓場は自宅の裏山にあり、基本的に私の家系の墓しかありません。

唯一近くにあるのは道祖神さんの碑があるだけでして、
周囲には桜や柊、榊の木が植えてあり、
春には花見などを行うのか慣例になっています。

私の奇妙な体験は、私が高校生に入学したての頃でした。

自宅からかなりの距離にあり、
電車と自転車を乗り継いで帰宅する頃には、
すっかり日が落ちているのが基本でした。

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もう桜も終わりの頃でしたが、
山間にある自宅のまわりはまだ気温が低く、
桜の花も満開に近い咲き方をしていました。

その日は曇りだったのか、月明かりがほとんど無い夜でした。

なのにはっきりと、桜の花だけは綺麗に見えていたのを覚えています。

新しい学校に入って間もなかったため、夜道に慣れていなかった私は、
ところどころにある街灯を頼りに自転車を漕いでいました。

十分に道は知り尽くしているし、問題もない。

そう思っていたのですが、
慣れない道は時間ばかりが過ぎていってしまうように感じられて仕方ありませんでした。

かれこれどのくらいこうしているのやら……

普段なら30分くらいで着くはずなのに、一向にたどり着けません。

まだ山道に入って半分も行っていない。

街灯の明かりを見つけ、その下で自転車を降りて少し息をつくことにした私は、
何気なく自分の腕時計をのぞいてみました。

ところが、デジタル式の時計の表示板には何も映っていなかったのです。

私は首を傾げました。

たしか、電車の駅で見たときには正常に動いていた筈なのですが……。

気味が悪くなり、自宅への道を急ごうと自転車に跨りました。

そして再び山道を登り始めたのですが、不思議な事に、
それから進んでも進んでも自宅にたどり着けないのです。

道はよく見知った山道。

しかもほとんど一本道で、迷うわけが無いと言うのに、
どうしてか自宅の明かりすら見えないのです。

これはどうにもおかしいと感じながらも進み続けたのですが、結局自宅にたどり着けず、
途中の街灯の下で再び小休止することにしました。

そこにはたまたま大きな桜の木があり、街頭の光をうけて一際白く輝いていました。

自転車を降りて深呼吸し、時計を再び覗き込んでみたのですが、
やはり表示板にはなにも映らず、途方にくれていたその時でした。

風は無かったのですが、枝がさざめくような音がしてきたのです。

その音は次第に大きくなり、風も無い、枝も揺れてなどいないというのに、
周り中から聞こえてきだしたのです。

正真正銘気味の悪くなった私は、急いで自転車を漕ぎ始めました。

しかし、さざめきは遠ざかるどころか次第に近くなり、
しまいには耳のすぐ傍で聞こえてくるようになっていました。

私にはその時の音が何かの笑い声のようにも聞こえたので、
さらに気味が悪くなり、必死で自転車を漕ぎ続けました。

ですが、その直後。

不可解な事に、私は急ブレーキをかけてしまったのです。

私自身はかけたつもりは無かったのですが、
そのためにバランスを崩し派手に転んでしまいました。

擦り傷と打撲の痛みよりも、
耳元でやかましく鳴るさざめきのほうが気味が悪く、
私は思わず耳を塞いでしまいました。

ですが、さざめきは耳を塞いだと言うのに、
耳のすぐ傍で鳴っているようにやかましく、
気が狂いそうなくらいの音量で鳴り続けました。

どのくらい時間がたったのか。

何時の間にか意識が飛んでいた私は、もうさざめきは聞こえませんでした。

いつものように静かな夜の中で、目の前には桜や柊、榊の木が立っている風景でした。

私はどこをどうしたのか、自宅ではなく墓場の中で、
墓石に寄りかかるように眠っていたのでした。

次第に鮮明になる意識とともに、私は慌てて手を合わせて、
墓石に寄りかかって眠っていた非礼を詫び、
自宅への帰路に着きました。

そして、今度は数分もかからずに到着できたのです。

自宅で祖父母にその話をすると、大笑いされ

「狸にでも化かされたんじゃろ」

と言われてしまいました。

しかし、なんで墓場で眠っていたのか…いまだにそれだけは理解できません。

以後、このときのようなことはありませんでしたが、
山道で狸を見かけると、どうにも苦手で避けてしまうようになりました。

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