【ほん怖】ほんのりと怖い話まとめ - 【ほん怖】オオカミ様の神社の修繕

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【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
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【ほん怖】オオカミ様の神社の修繕

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俺が宮大工見習いをしてた時の話。

だいぶ仕事を覚えてきた時分、
普段は誰も居ない山奥の古神社の修繕をする仕事が入った。

だが親方や兄弟子は、
同時期に入ってきた地元の大神社の修繕で手が回らない。

「おめぇ、一人でやってみろや」

親方に言われ、
俺は勇んで古神社に出掛けた。

拍手[2回]

そこは神社とはいえ、
小屋提程度のお堂しかなく、
年に数回ほど管理している麓の神社の神主さんが来て掃除する位。

未舗装路を20km程も入り込んで、
更に結構長い階段を上って行かねばならない。

俺は兄弟子に手伝ってもらい、
道具と材料を運ぶのに数回往復する羽目になった。

そのお堂は酷く雨漏りしており、
また床も腐りかけで酷い状態だった。

予算と照らし合わせても中々難しい仕事である。

しかし、俺は初めて任せられた仕事に気合入りまくりで、
まずは決められた挨拶の儀式をし、
親方から預かった図面を元に作業に掛かった。

この神社はオオカミ様の神社で、
鳥居の前には狛犬ではなくオオカミ様の燈篭が置いてある。

俺は鳥居を潜る度に、
両脇のオオカミ様に一礼する様にしていた。

約一ヶ月経過し、
お堂がほぼカタチになってきた。

我ながらかなり良い出来栄えで、
様子を見に来た親方にも、

「なかなかの仕事が出来ているな」

と褒めてもらった。

それで更に気合が入り、
俺は早朝から暗くなるまで必死で頑張った。

ある日、内部の施工に夢中になり、
ハッと気付くと夜の10時を過ぎていて、
帰るのも面倒になってしまった。

腹が減ってはいるが、まあいいかと思い、

「オオカミ様、一晩ご厄介になります」

とお辞儀をして、
お堂の隅に緩衝材で包まって寝てしまった。

どれくらい眠っただろうか。

妙に明るい光に

「ん...もう朝か?」

と思って目を開けると、
目の前に誰か座っている。

あれ?と思い身体を起こすと、
日の光でも投降機の光でもなく、
大きな松明がお堂の中にあり、
その炎の明るさだった。

そして、明るさに目が慣れた頃に、
目の前に座っていたのは艶やかな長い髪の巫女さんだった。

「○○様、日々のご普請ご苦労様です」

鈴の鳴るような澄んだ声が聞こえると共に、
彼女は深々とお辞儀をした。

「ホウエ?」

俺は状況が飲み込めず間抜けな声を返しながら、
お辞儀でさらっと流れた黒髪に見惚れてしまった。

「我が主から、
○○様がお堂にお泊りなのでお世話をする様にと申し付けられ、
ささやかでは有りますが、酒肴をご用意して参りました」

彼女が料理と酒の載った盆を俺の前に置く。

盆の上には大盛りの飯、山菜の味噌汁、大根や芋の煮物、
渓流魚の焼き物、たっぷりの漬物。

そして、徳利と杯が置いてある。

「さ、どうぞ」

彼女が徳利をもち、俺に差し出す。

俺は良く解らないまま、
杯を持ちお酌をしてもらった。

くっと空けると、
人肌ほどの丁度良い燗酒で、
甘くて濃厚な米の味がした。

「…旨い!」

俺が呟くと、巫女さんは

「それはようございました」

と、涼やかな微笑みで俺を見つめた。

途端に腹がぐうと鳴り、
俺は夢中で食事をした。

巫女さんは微笑みながら、
タイミング良くお酌をしてくれる。

食べ終わり、
巫女さんがいつの間にか用意してくれたお茶を飲みつつ、

「ご馳走様でした。
ところで貴女は、ココの神主さんの身内の方か何かですか?」

と聞いてみた。

「ふふ、そのような物です。お気になさらず」

巫女さんは膳を片付けながら答えてくれた。

突然俺は猛烈に眠くなってきて、
もう目を開けているのも苦痛なくらいになった。

「お疲れのようですね。
どうぞ横におなり下さいませ」

巫女さんはふらつく俺の頭を両手でそっと抱え、
彼女の膝の上に乗せてくれた。

彼女の長い黒髪が俺の顔にさらっと掛かる。

彼女の黒髪に似合う髪飾りってどんなのだろう、
と柄でもない事を考え、
暖かく柔らかな感触を頭に感じつつ、
俺は深い眠りに落ちていった。

「おい、○○。起きろや」

親方の声で目を覚ました俺は、
バッと飛び起き時計を見る。

朝の7時。

目の前には、
ニコニコした親方と神主さんが居る。

「あ、すみません親方。
昨夜遅くなったんで、泊まっちまいました」

俺は親方にどやしつけられるかとビクビクしながら謝った。

「ふ。お堂の中で一晩過ごすなんざ、
おめぇもそろそろ一人前かぁ?」

なぜか嬉しそうな親方。

なんとか怒られずに済んだようだ。

「あ、神主さん、昨夜はありがとうございました。
食事届けていただいて」

「はぁ?なんですかそれは?私は存じませんが?」

「え?だって神主さんのお身内だっていう巫女さんが、酒と食事を持ってきてくれて…」

「いやあ、あなたがお堂に泊まってるのに気付いたのは今朝ですよ。
朝、様子を見に来たら、あなたの軽トラが階段の下に止まっていたので、
何か有ったのかと思って親方に連絡して、一緒にお堂に来たのですが…」

「え?そんなはずは…?」

戸惑う俺を見て、
親方が大笑いしながら言った。

「大方、腹減らしながら寝ちまったから、そんな夢を見たんだろうよ。
それか、オオカミ様がおめぇの働き振りを気に入って、
ご馳走してくださったかだ。
まあ、後でお礼の酒でも納めれば良いんじゃねえか」

一週間後、
無事に竣工した神社を奉納する儀式も終わった。

俺は休日に一人で神社に行き、
酒と銀細工の髪飾りを納めた。

帰りに鳥居を潜ろうとしたとき、
お堂の前に間違いなく誰かが居る様な濃厚な気配を感じて、
振り向きそうになったが、
そのまま一礼して階段を降り始めた。

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