×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
| |
スポンサーリンク
夏と秋、山小屋でアルバイトをしていた後輩が下山してきた。
朝から晩まで追い回されるように過ごし、
ほんの少しの山歩きを楽しんだらしい。 その山小屋は、
夕方ともなると宿泊する登山者で満杯になり、 靴が整然と玄関付近を埋め尽くす。 無論、整然と靴を並べるのは我が後輩の役目だ。 指名されたわけではないが、
何となく、後輩の役目になってしまった。 靴を各自で保管すれば良さそうなものだが、 小屋の主人の方針で客の靴は玄関に並べておく。 翌朝、客が出かけ始めると、 玄関から靴が消えていく。 ある朝、全ての宿泊客が出払った後、 靴が一足だけ残された。 年季の入った古い登山靴だ。 昨夜、これがあっただろうかと思い返してもはっきりしない。 覚えきれないほどの人数が泊まれるような施設ではない。 小屋の主人に声をかけ、 靴を見に玄関へ戻ると、 すでに靴はない。 翌朝、彼の忙しい一日が始まり、 宿泊客の出発が一段落し、 せわしない一日の中でも、
時間の流れが少しだけゆったりする頃、 玄関の掃除を始めようとする彼が見るのは、
昨日と同じ靴だ。 小屋の主人を呼びに行った。 無論、二人が戻る時には靴など残っていない。 三日目にも靴はあったが、 もう彼は主人を呼びに行かなかった。 小屋の主人を連れてくることが、 靴の主を追い立てる行為に思えた。 数日後、客が出払った後の玄関に、 その靴はなかった。 代わりに食堂のテーブルに彼宛の封筒が置かれていた。 封筒を開くと、しわくちゃの千円札が一枚。 客からの心づけだから取っておけと主人に言われ、 彼は千円札を財布に入れた。 千円札に印刷されている人物は、伊藤博文だった。 あの靴と同じくらい年季が入った、古い札だった。 PR コメントを投稿する
<<【ほん怖】山の主様 | ブログトップ | 【ほん怖】死んで捨てられた動物>> |