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【ほん怖】ほんのりと怖い話をまとめました!「怖い話は好きだけど、眠れないほど怖い話は読みたくない!」そんなあなたにぴったりな『ほんのりと怖い話』をお楽しみください。
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ある夏、大学のゼミの中で、
県外から来てる連中で集まってキャンプに行くことになった。 場所は沖縄本島からさほど遠く無いとある離島。
小さなフェリーに乗って付いた先の港には、
迎えのマイクロバスが待っていた。 港とキャンプ場がある村落までの間には何も無い山道。
すれ違う車も無い。 キャンプ場に着き荷物を降ろすと、
受付らしき小屋にいたおじさんに予約してあった旨を伝える。 おじさんはニコニコしながら貸しテントやバーベキューセット、 燃料の薪などを用意してくれた。 「トイレとシャワーはこの小屋の裏、
流しもあるから水はそこで汲んだらいいサ」 訛りのキツい口調で、
相変わらずニコニコ説明してくれる。 「この道まっすぐ行った先に開けた場所があるから。
好きなトコにテント張ってくださいネ」 指差す先には、
雑木林の様にこんもりと生い茂る木々の中に、 細く切られた未舗装の土の道。 粘土質の土が踏み固められた道は、
人一人がやっと通れる幅で、 ずっと先まで続いている。 本当にこの先にキャンプ場が?と不思議に思ったが、
ボヤボヤしていると遊ぶ時間が無くなると、 皆荷物を担いで駆け足でその道を進んだ。
サンダル越しの土の柔らかさが心地良かった。
木々のトンネルを抜け、
日差しの中に飛び出すと皆一斉に歓声を上げた。 道から続く開けた土地は思いの外広く、
そのすぐ先には白い砂浜が遥か彼方まで続く。 そして、降り注ぐ太陽にきらめく青い蒼い海。 沖縄と言えど、
本島でもお目にかかれない景色だ。 男達がテントの設営や火を熾している間に、
女性陣はさっさと水着に着替えて海へ飛び込んだ。 時間はあっと言う間に過ぎた。
食事を終え、酒を飲み、歌い、騒いだ。
日もとっぷりと暮れ、
一つだけ灯したランタンと焚き火の明かりだけが皆の顔を照らす。 「ねぇ稲川君」
一つ上の先輩が声をかけてきた。
「おトイレ行きたいんだけど…
怖いから付いて来てくれない?」 明るいうちは、
シャワーを浴びたり炊事用に水を汲んだりと何度も往復したが、 今はもう真っ暗で、街灯も無いあの道は女性には怖かろう。
女連中で連れ立って行こうにも、
酔いつぶれていたり話し込んでいたりで誘い難かったらしい。 幸い手も空いていた自分は、
彼女と2人でランタンを手に、暗い森の道へと向かった。 2人並んで歩ける程の道幅はないので、
自分が前になり後ろを彼女が付いて来る形になる。 よほど怖いのか、
自分のTシャツの裾をぎゅっと掴んで離さない。 ところが、
歩く速度が彼女の方が早く、 後ろからズンズン押されるようになった。 「ちょっと先輩、危ないっスよ」
言うより早く彼女は自分の脇をすり抜け、
もの凄い勢いで走り去って行った。 「ありゃ…?
トイレ我慢出来なくなったのかな?」 暗い道で転んではマズいと、
慌てて追いかけた。 結局、道の途中では追い付けず、
小屋の前でへたり込んでいる彼女を見つけた。 まさか…間に合わなかった…とか?
一瞬、大変な事になったと思ったが、
どうにも様子がおかしい。 「先輩、どうしたんスか?大丈夫っスか?」
小屋に一つだけ有る街灯の明かりの中で、
うずくまる彼女に声をかけた。 泣いているのか肩がぶるぶる震えている。
「見えなかった…の?」
「え?」
「稲川君はアレ見えなかったの?!」
振り向いた彼女の顔色は真っ青で、
じっとりと汗ばんでいた。 「アレって何の事です?」
「…ここで話すのはイヤ。
とりあえず用を足してから…」 よろよろと立ち上がった彼女は、
小屋の裏のトイレへと入って行った。 彼女が用を足し終えて帰る段になり、
同じ道を通るのは絶対にイヤだと主張したので、 遠回りに海岸へ出る道を捜して、 しばらく辺りをうろうろした。 やっと砂浜へ出て、
テントのある方向へ白砂を踏みしめて歩き始めた時、 彼女が先程の事を話し始めた。 「木が生えてたでしょ?」
「はい」
と言うより周りは木だらけ、
木々の中に道があったのだ。 「暗くて怖いから、
ずっと稲川君の背中見て歩いてたの」 「はい」
「でも視界の端には木が見えるのよ」
「はい」
ゆっくりと話す彼女の声、
相づちを打つ自分の声、 踏みしめる砂の音、波の音、風… 「真っ暗なのに木が見えるの」
確かに、
木々の向こうに開けた場所でもあるのかうっすらと明るく、 木々達がシルエットとなり、一層闇を際立たせていた。
「木がね、一本一本真っ黒く、くっきり見えるのよ」
木がそんなに怖かったろうか?
と先程の光景を思い起こしたが、 異形の木など見た覚えが無い。 ふっと彼女が立ち止まる。
「気が付いたの、違ったのよ」
「え?」
「黒い木じゃなかったの」
うつむいたまま、
かすかに震えながら彼女は言葉を続けた。 「白い着物を着た老人が沢山、
ずらっと横に並んでこっち見てたの! お爺さんとかお婆さん達の『隙間』が黒く見えてたの!」 虫でも入ったのか、
ランタンがジジっと音を立てた。 その後泣きじゃくる彼女を連れて無事に仲間の元に戻り、
寝かしつけた後、悪友らと共に飲み直し、 気が付くと、
火の消えた焚き火の傍らでタオルケットに包まれていた。 日はとうに頭上高く登り、
セミの鳴き声が喧しく二日酔いの頭に響いた。 朝食兼昼食をもそもそと済ませ、
テントを畳み荷物をまとめた。 件の先輩は普段通り元気を取り戻しており、
ほっと胸を撫で下ろす。 片付けが済み、
最後にもうひと泳ぎして帰る時間となった。 借りた用具を返しに行くと、
小屋からおじさんが出て来た。 「皆さんキャンプは楽しめたネ?」
来た時と同じニコニコ顔で迎えてくれる。
「はい!とても楽しかったです。ただ…あの…」
「ん?何ネ?」
少し気になったので訊いてみる事にした。
「あの林の向こうなんですが…」
「あーごめんネぇ。
先に言うと皆イヤがるからサ」 「え?」
「あぃ?兄さん林の向こう行ったんじゃないノ?」
「いや、そう言う訳では…」
「あの林の向こうはサ、この村のお墓がある訳ヨ」
「え!?」
「このキャンプ場が後から出来て、
お墓の中に道通す訳にはイカンから、 この道作ってある訳サ」 動揺を隠せずにおどおどとしていると、
おじさんは尚もニコニコしながら言った。 「今の次期はサ、内地で言うお盆?
ご先祖様が帰って来る時期だから、
ホントならこのキャンプ場も休みだったけど、 間違って予約受けてしまったからサ」 そう言われて、
初めて自分達以外客がいなかった事に気が付いた。 呆然と立ち尽くす自分を尻目に、
ケタケタと笑うおじさん。 ふと視線を感じて振り向くと、
先輩が泣きそうな顔で立っていた。 PR コメントを投稿する
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